FDA承認ペプチド医薬品 一覧【2026年版】

FDAが承認したペプチド医薬品を領域別(糖尿病・肥満、がん、骨粗鬆症、HIV、感染症、ミトコンドリア疾患など)に一覧化。一般名・商品名・承認年・適応・日本の承認状況を表でまとめ、「ペプチド=怪しい」という誤解がなぜ間違いなのかを整理します。

FDA承認ペプチド医薬品 一覧【2026年版】

結論(3行)

FDA承認ペプチド医薬品とは、米国食品医薬品局(FDA)が有効性と安全性を審査して承認した、アミノ酸が連なった構造(ペプチド)を有効成分とする医薬品である。 インスリンから最新のGLP-1受容体作動薬まで、承認済みのペプチド薬は100品目を超え、糖尿病・肥満・がん・骨粗鬆症・HIVなど幅広い領域で標準治療に組み込まれている。 「ペプチド」という言葉自体は怪しいものではなく、問題になるのは「未承認のペプチド」を医薬品のように扱うことである。

このページの見方

ここでは、僕(ペプチ堂管理人)が公的情報で確認できた範囲の承認済みペプチド薬を領域別にまとめました。FDA(Drugs@FDA)とPMDA(医薬品医療機器総合機構)の承認情報をベースにしています。承認年は米国での初回承認年です。日本の承認状況は「承認済(商品名)」「未承認」で示し、確認が取れていないものは「要確認」と書いています。

なお、このページは用量・入手方法・投与方法には一切触れません。医薬品は医師の処方のもとで使うものです。

領域別一覧

糖尿病・肥満(インスリン製剤/GLP-1系)

一般名 主な商品名 FDA承認年 適応 日本の承認状況
ヒトインスリン(遺伝子組換え) Humulin 1982 糖尿病 承認済(ヒューマリン)
インスリン グラルギン Lantus 2000 糖尿病 承認済(ランタス)
リラグルチド Victoza / Saxenda 2010 / 2014 2型糖尿病 / 肥満症 承認済(ビクトーザ/サクセンダ)
セマグルチド Ozempic / Rybelsus / Wegovy 2017 / 2019 / 2021 2型糖尿病 / 肥満症 承認済(オゼンピック/リベルサス/ウゴービ)
チルゼパチド Mounjaro / Zepbound 2022 / 2023 2型糖尿病 / 肥満症 承認済(マンジャロ/ゼップバウンド)
デュラグルチド Trulicity 2014 2型糖尿病 承認済(トルリシティ)
エキセナチド Byetta / Bydureon 2005 / 2012 2型糖尿病 承認済(バイエッタ/ビデュリオン)
プラムリンチド Symlin 2005 1型・2型糖尿病 未承認

GLP-1受容体作動薬(セマグルチド、チルゼパチド)は、日本でも肥満症治療薬として承認されています。ただし日本では適応基準(BMI・合併症)が定められており、「痩せたい」だけでは保険診療の対象になりません。

がん・内分泌腫瘍

一般名 主な商品名 FDA承認年 適応 日本の承認状況
リュープロレリン(リュープロリド) Lupron 1985 前立腺がん、子宮内膜症ほか 承認済(リュープリン)
ゴセレリン Zoladex 1989 前立腺がん、乳がんほか 承認済(ゾラデックス)
オクトレオチド Sandostatin 1988 先端巨大症、神経内分泌腫瘍 承認済(サンドスタチン)
ランレオチド Somatuline Depot 2007 先端巨大症、神経内分泌腫瘍 承認済(ソマチュリン)
デガレリクス Firmagon 2008 前立腺がん 承認済(ゴナックス)

GnRH(LH-RH)アナログやソマトスタチンアナログは30年以上の使用実績があり、ペプチド医薬品としては最も歴史の長いグループです。

骨粗鬆症

一般名 主な商品名 FDA承認年 適応 日本の承認状況
テリパラチド Forteo 2002 骨折リスクの高い骨粗鬆症 承認済(フォルテオ/テリボン)
アバロパラチド Tymlos 2017 骨折リスクの高い骨粗鬆症 承認済(オスタバロ、2021年)

どちらも副甲状腺ホルモン(PTH)由来のペプチドで、骨形成を促す「骨形成促進薬」です。

HIV・感染症

一般名 主な商品名 FDA承認年 適応 日本の承認状況
エンフュービルタイド Fuzeon 2003 HIV-1感染症(多剤併用) 承認済(フューゼオン)※要確認
ダプトマイシン Cubicin 2003 MRSAを含むグラム陽性菌感染症 承認済(キュビシン)
バンコマイシン Vancocin 1958 MRSA感染症ほか 承認済(塩酸バンコマイシン)

注意:バンコマイシンは「グリコペプチド系抗菌薬」と呼ばれ、ペプチド骨格に糖が結合した構造です。ダプトマイシンは環状リポペプチドです。どちらも広義のペプチド系医薬品として一覧に含めていますが、いわゆる「ペプチド療法」で話題になる直鎖ペプチドとは性質が異なります。

性機能・ホルモン・その他

一般名 主な商品名 FDA承認年 適応 日本の承認状況
ブレメラノチド Vyleesi 2019 閉経前女性の性欲低下障害(HSDD) 未承認
テサモレリン Egrifta 2010 HIV患者の内臓脂肪蓄積(リポジストロフィー) 未承認
オキシトシン Pitocin 1962※ 分娩誘発 承認済(アトニン-O)
デスモプレシン DDAVP 1978 中枢性尿崩症ほか 承認済(デスモプレシン)
セトロレリクス Cetrotide 2000 不妊治療における早発排卵抑制 承認済(セトロタイド)
エラミプレチド Forzinity 2025(迅速承認) バース症候群の筋力改善 未承認

※オキシトシンはFDAの承認年表記に揺れがあるため、目安として記載しています。

エラミプレチド(Forzinity)は2025年9月にFDAが迅速承認した、ミトコンドリアを標的とする初の承認薬です。Stealth BioTherapeuticsのプレスリリースとFDA承認レターで確認できます。海外の「ミトコンドリア系ペプチド」の話題でよく名前が挙がるので、承認薬として把握しておくと混乱しません。

「ペプチド=怪しい」はなぜ間違いなのか(ペプチ堂管理人の読み)

僕がこのサイトを始めた理由のひとつは、「ペプチド」という言葉だけで全部を十把一絡げに怪しいと決めつける空気に違和感があったからです。上の表を見れば分かる通り、インスリンもオゼンピックもリュープリンも全部ペプチドです。国内の病院で毎日処方されている薬の相当数がペプチド医薬品で、日本の医療はペプチドなしでは回りません。

怪しいのは「ペプチド」ではなく、「承認されていない物質を、承認薬と同じ顔をして売る行為」です。BPC-157やTB-500のような研究段階のペプチドは、臨床試験での有効性も安全性も確立していません。医薬品副作用被害救済制度の対象外で、何かあっても自己責任になります。承認薬と未承認ペプチドの間には、何年にもわたる第I〜III相試験と審査という壁があります。その壁の有無を区別することが、このサイトで僕が一番伝えたいことです。

もうひとつ。「FDA承認=日本でも使える」ではありません。ブレメラノチドやテサモレリンは米国では承認薬ですが日本では未承認で、国内で処方されることはありません。逆に、日本で承認されているのに米国にはない製剤(テリボンなど)もあります。承認は国ごとの判断です。

よくある質問

Q. FDA承認ペプチドは何種類ありますか? A. 定義(ペプチドの長さ、糖ペプチドを含めるか等)で変わりますが、学術論文では「100品目以上」とされることが多いです。2024年にはFDA新薬承認のうち複数がペプチドでした(Al Musaimi ら、Pharmaceuticals誌)。

Q. FDA承認なら日本でも処方してもらえますか? A. いいえ。日本では厚生労働省(PMDA審査)の承認が別に必要です。上の表の「日本の承認状況」を確認してください。

Q. BPC-157やセマックスは承認薬ですか? A. 米国・日本ともに医薬品として承認されていません。承認薬と同列に扱わないのが原則です。

Q. GLP-1は「ペプチド」なのに、オルフォルグリプロンは違うのですか? A. はい。2026年4月にFDAが承認したオルフォルグリプロン(Foundayo)は非ペプチドの低分子GLP-1受容体作動薬です。作用は似ていますが構造はペプチドではありません。

Q. 承認薬でも副作用はありますか? A. あります。承認は「ベネフィットがリスクを上回ると判断された」ことを意味し、副作用ゼロを意味しません。添付文書を確認してください。

一次情報

  • FDA, Drugs@FDA(各品目の承認レター・添付文書)
  • PMDA 医薬品医療機器総合機構「承認情報」/各製品の添付文書
  • Stealth BioTherapeutics プレスリリース「FDA Accelerated Approval of FORZINITY (elamipretide)」2025年9月、およびFDA NDA 215244 承認レター
  • Eli Lilly プレスリリース「FDA approves Lilly’s Foundayo (orforglipron)」2026年4月
  • 帝人ファーマ プレスリリース「オスタバロ皮下注カートリッジ3mgの製造販売承認取得」2021年3月
  • Al Musaimi O. ほか「The Pharmaceutical Industry in 2024: An Analysis of the FDA Drug Approvals from the Perspective of Molecules」Pharmaceuticals, 2025
  • Wang L. ほか「Therapeutic peptides: current applications and future directions」Signal Transduction and Targeted Therapy, 2022
本記事は研究・教育目的の情報提供です。医学的助言ではありません。最終更新:2026-08-22