治験中のペプチド一覧【2026年】

2026年8月時点で臨床試験中の主なペプチド医薬品候補(レタトルチド、MariTide、アミクレチン、CagriSema、サボデュチド、エロラリンチドなど)を開発段階・開発企業付きで一覧化。非ペプチドのオルフォルグリプロンや承認済エラミプレチドとの線引きも整理します。

治験中のペプチド一覧【2026年】

結論(3行)

治験中のペプチドとは、医薬品としての承認を目指して第I〜III相の臨床試験が進行中で、まだどの国でも承認されていないペプチド候補のことである。 2026年時点で最も注目されているのは肥満症・2型糖尿病領域で、レタトルチド(Eli Lilly)、CagriSema とアミクレチン(Novo Nordisk)、MariTide(Amgen)、サボデュチド(Boehringer Ingelheim)が第III相にある。 治験中=有望であっても、承認前に個人が使うことは想定されていない。治験参加以外の使用は医薬品副作用被害救済制度の対象外になる。

このページの位置づけ

僕(ペプチ堂管理人)が各社のプレスリリースや学会発表(ADA 2026 など)で確認できた範囲で、2026年8月時点の開発状況を整理しました。開発段階は日々動くので、「いつの情報か」を必ず意識して読んでください。数字(減量率など)は各社発表の主要評価項目の値で、試験ごとに条件が違うため横並び比較はできません。

肥満症・2型糖尿病領域

候補名 作用 開発企業 段階(2026年8月) 備考
レタトルチド(retatrutide) GIP/GLP-1/グルカゴン 三重作動薬 Eli Lilly 第III相(TRIUMPH プログラム) 主要な第III相試験の結果を2026年に相次いで公表。申請は2027年見込み
CagriSema(カグリリンチド+セマグルチド) アミリンアナログ+GLP-1 Novo Nordisk 米国申請済(2025年12月) REDEFINE 試験で84週時約20%の体重減少を報告。米国の審査結果は2026年後半見込み
アミクレチン(amycretin、一般名ゼナガムチド) GLP-1/アミリン 単一分子作動薬 Novo Nordisk 第III相(AMAZE プログラム、2026年開始) 皮下注と経口の両剤形を開発中
MariTide(maridebart cafraglutide) GIP受容体拮抗+GLP-1作動(抗体-ペプチド複合体) Amgen 第III相(MARITIME プログラム) 月1回投与。第II相で52週時最大約20%の体重減少
サボデュチド(survodutide) GLP-1/グルカゴン 二重作動薬 Boehringer Ingelheim / Zealand Pharma 第III相(SYNCHRONIZE プログラム) 2026年5月に第III相結果を公表。MASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎)でも開発中
エロラリンチド(eloralintide) 選択的アミリン受容体作動薬 Eli Lilly 第III相 第II相で最大約20%の体重減少を報告。第III相完了は2030年頃の見込み
ペムビデュチド(pemvidutide) GLP-1/グルカゴン 二重作動薬 Altimmune 第II相(MASH) 肥満症から MASH へ軸足を移行
ダピグルチド(dapiglutide) GLP-1/GLP-2 二重作動薬 Zealand Pharma 第II相
ペトレリンチド(petrelintide) 長時間作用型アミリンアナログ Zealand Pharma / Roche 第II相

注意:オルフォルグリプロンは「ペプチドではない」

オルフォルグリプロン(Foundayo、Eli Lilly)は2026年4月にFDAが肥満症に承認した経口GLP-1受容体作動薬ですが、非ペプチドの低分子化合物です。「経口GLP-1=ペプチド」と誤解されがちなので、この一覧には「治験中」にも「ペプチド」にも該当しない参考情報として記載します。同じく経口でも、リベルサス(経口セマグルチド)はペプチドです。

ミトコンドリア・希少疾患領域

候補名 作用 開発企業 段階 備考
エラミプレチド(elamipretide) ミトコンドリア・カルジオリピン結合ペプチド Stealth BioTherapeutics 米国で承認済(2025年9月、迅速承認、バース症候群) 「治験中」ではなくなった。原発性ミトコンドリアミオパチーなど他疾患では引き続き臨床試験中

エラミプレチドは長年「治験中ペプチド」の代表格でしたが、2025年にバース症候群を適応として FDA の迅速承認を得ました。迅速承認は検証的試験での臨床的有用性の確認が条件です。日本では未承認です。

その他の注目領域(概況)

領域 動き
がん ペプチド-薬物複合体(PDC)やペプチド放射性リガンドの開発が活発。承認済のルテチウム製剤に続く候補が複数第III相
感染症 抗菌ペプチド(AMP)は第II相止まりが多く、承認に至った新規 AMP は少ない
神経・精神 経鼻投与ペプチドの小規模試験が散発的。第III相まで到達した例は限定的

研究段階の「回復系ペプチド」(BPC-157、TB-500 など)は、2026年時点で第III相の臨床試験が存在しません。このページの「治験中」は、規制当局に届け出た臨床試験が進行中のものに限っています。

海外で話題になっている理由(ペプチ堂管理人の読み)

2026年の肥満症領域は、「どれだけ痩せるか」の競争から「どう維持するか」「どれだけ打つ頻度を減らせるか」の競争に移っていると僕は見ています。レタトルチドの三重作動薬は減量幅で頭ひとつ抜けており、MariTide は月1回投与という利便性で攻め、Novo はアミリン系(CagriSema、アミクレチン)で食欲以外の軸を狙っています。エロラリンチドのように「筋肉量を落としにくいか」を売りにする候補も出てきました。

ただ、僕が一番言いたいのは別のことです。治験中の候補の名前がSNSで拡散されると、同名の「研究用試薬」が出回り、承認薬であるかのように扱われます。レタトルチドは2026年8月時点でどの国でも承認されていません。治験薬は、試験の中で管理された条件でだけ評価されているものです。名前を知っておくことと、使うことは別です。

よくある質問

Q. レタトルチドはいつ承認されますか? A. Eli Lilly は2027年の申請を計画していると報じられています。承認時期は未定で、日本での申請時期は公表されていません。

Q. CagriSema は承認されましたか? A. 2026年8月時点で米国の審査中です(2025年12月に申請)。日本では申請されていません。

Q. 治験中のペプチドを個人で使うことはできますか? A. 治験参加以外の使用は想定されていません。医薬品副作用被害救済制度の対象外で、安全性データも限られています。

Q. 「第II相で20%減量」は承認薬より効くということですか? A. いいえ。試験ごとに対象者・期間・比較対照が異なり、単純比較はできません。第III相と審査を経て初めて有効性が確立します。

Q. MariTide はペプチドですか? A. GLP-1ペプチドを抗GIP受容体抗体に結合させた「抗体-ペプチド複合体」です。純粋なペプチドではありませんが、GLP-1系として本ページに含めています。

一次情報

  • Eli Lilly プレスリリース(TRIUMPH 第III相試験の結果、2026年)および ADA 2026(米国糖尿病学会)発表
  • Novo Nordisk プレスリリース「CagriSema NDA submission」2025年12月、および REDEFINE 試験結果
  • Novo Nordisk プレスリリース「amycretin Phase 3 programme」2026年
  • Amgen プレスリリース「MARITIME Phase 3 programme for MariTide」
  • Boehringer Ingelheim / Zealand Pharma プレスリリース「SYNCHRONIZE-1 topline results」2026年5月
  • Stealth BioTherapeutics プレスリリース「FDA Accelerated Approval of FORZINITY (elamipretide)」2025年9月
  • Eli Lilly プレスリリース「FDA approves Foundayo (orforglipron)」2026年4月
  • ClinicalTrials.gov(各試験の登録情報)
本記事は研究・教育目的の情報提供です。医学的助言ではありません。最終更新:2026-08-22