数千円の手数料を払わなかっただけで、特許が消えた
ノボノルディスクはカナダのセマグルチド特許の年次維持手数料(約1,200〜2,000カナダドル)を2018年を最後に納めず、2020年に特許が失効していた。米国では2033年まで守られる同じ薬が、カナダでは2026年からジェネリック参入が見込まれている。
セマグルチドの米国での特許は2033年まで守られる見込みだが、カナダでは2020年にすでに失効していた。
原因はノボノルディスクが年次の特許維持手数料(約1,200〜2,000カナダドル)を2018年を最後に納めなかったこと。
2026年からカナダでジェネリック参入が見込まれ、価格は現行より50〜80%下落すると予測されている。
同じセマグルチドという薬なのに、独占できる期限が国によって大きく異なっていることが、特許専門の法律事務所の分析で明らかになりました。
米国では2033年まで、カナダでは2020年に失効
セマグルチドの米国の中核特許(US8,129,343ファミリー)は2031年12月まで有効で、実務上のジェネリック参入は2032年と予測されています。用途特許は2033年まで及ぶとされます。
ところがカナダでは、この構図が成り立っていませんでした。英国の知財法律事務所Reddie & Groseの分析によると、ノボノルディスクはカナダにおける同特許の年次維持手数料(約1,200〜2,000カナダドル)を2018年を最後に納付せず、1年間の猶予期間も使わないまま2020年に特許が失効していたといいます。カナダ特許法では、一度失効した権利は復活できません。
意図的か、過失か
この失効が「意図的だったのか、単なる過失だったのか」については見解が分かれています。ノボノルディスク側は過失を否定し、意図的な判断だったとしているとの記述もありますが、なぜ主要市場のひとつであるカナダの特許をあえて手放したのかについて、詳細な説明は本稿では確認できていません。
カナダのジェネリック参入が前倒しに
この特許失効の結果、カナダでは2026年1月以降、Sandoz・Apotexなどのジェネリックメーカーが早ければ参入する見込みと報じられています。価格は現行のブランド薬より**50〜80%**下落すると予測されています。
なお、世界に目を向けると、インド・ブラジル・トルコなど世界人口の約40%を占める国々でも2026年中に特許が順次失効する見込みで、インドでは約40社がジェネリック開発に殺到していると報じられています。カナダの事例は「自ら手放した」という点で、これらの国とは性質が異なります。
ヤバい点は?
- 本稿では特許庁の原簿(カナダ知的財産庁)そのものは直接確認しておらず、複数の特許解説サイト・法律事務所の分析が一致している段階の情報です
- ジェネリックの品質・供給体制については、参入後の実態を追う必要があります
関連する成分
- セマグルチド(オゼンピック/ウゴービ/リベルサス)
- 同じ注射なのに、生まれた国で薬代が最大20倍違っていた — インドのジェネリック発売とアメリカの自費価格を比較
出典
- Reddie & Grose「A Key Ozempic Patent Lapses in Canada – Deliberate or a Mistake?」2025年10月15日
- Medpath「Novo Nordisk loses Canadian semaglutide patent protection over missed $450 fee, opening door to generics in 2026」
- drugpatentwatch「OZEMPIC」特許解説ページ(米国特許期限の記載を確認)
関連:semaglutide