NO.013承認薬

セマグルチド(オゼンピック/ウゴービ/リベルサス)

Semaglutide

別表記:セマグルチド/オゼンピック/ウゴービ/リベルサス/Wegovy/Ozempic

世界の食欲に、ブレーキを

GLP-1ブームの本流。注射も飲み薬も揃った基準薬

セマグルチド(オゼンピック/ウゴービ/リベルサス)
どこまで確かめられたか
  1. 試験管・理論
  2. 動物実験
  3. ヒト試験
  4. 承認

第III相(STEP 1、NEJM 2021)68週で平均14.9%の体重減少。SELECT(NEJM 2023)で心血管イベント20%低下

日本とアメリカで使えるか
JP承認あり

承認済み(オゼンピック 2018年/リベルサス 2020年/ウゴービ 2023年)。経口ウゴービは未承認

US承認あり

承認済み(Ozempic 2017年/Rybelsus 2019年/Wegovy 2021年/経口Wegovy 25mg 2025年12月)

知っておくべきリスク

消化器症状、膵炎、胆嚢疾患、糖尿病網膜症の悪化。甲状腺C細胞腫瘍の枠組み警告(米国)

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ノボ ノルディスクが作った GLP-1 受容体作動薬。オゼンピック・ウゴービ(注射)、リベルサス(飲み薬)の中身はぜんぶこれ。

海外では「痩せる」だけでなく「心臓と脳を守る」データ(SELECT)を出し、GLP-1 という言葉を世界に広めた薬。

日本でも3製品が承認済み。ただし「痩せ目的」の自由診療処方は適応外で、飲むウゴービは未承認。

結局、なにをする成分?

セマグルチドは、体にもともとある GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)というホルモンを改造したペプチドです。「セマグルタイド」という英語読みも見かけます。

GLP-1 は、食事をすると腸から出るホルモンです。ただし数分で分解されてしまいます。セマグルチドはアミノ酸を一部置き換え、脂肪酸のしっぽを付けて血液中のアルブミンにくっつけることで、体内に残る時間を約1週間まで延ばしました。

たとえるなら「すぐ切れる満腹スイッチを、1週間押しっぱなしにする薬」です。GLP-1 受容体(細胞の鍵穴)を刺激すると、

  • 血糖が高いときだけインスリンが出る
  • 胃の動きがゆっくりになる
  • 脳の食欲中枢に「もういい」と伝わる

この「食欲が落ちる」作用が、糖尿病薬から肥満症治療への転用につながりました。

飲み薬のリベルサスと経口ウゴービは、SNAC という吸収促進剤でペプチドを胃から吸収させる技術を使っています。そのため、空腹時に少量の水で飲むなどの制約があります。

なぜ海外でバズってるのか

セマグルチドは、肥満を「意志の問題」から「治療できる病態」に引きずり出した薬です。

STEP 1 の「15%」という数字も大きいですが、景色を変えたのは SELECT 試験です。1万7千人超を平均3年以上追跡し、糖尿病のない肥満者で心筋梗塞・脳卒中・心血管死の複合リスクを20%減らしました。肥満症治療薬として初めて示された心血管アウトカムで、「美容目的の薬」という批判が成り立たなくなりました。

海外でオゼンピックが固有名詞を超えて「GLP-1」という言葉そのものを広めたのは、この一撃があったからです。

で、効くの?

研究の段階状況
ヒト第III相○ STEP、SELECT、OASIS
ヒト第II相○
動物○
試験管○

代表的な数字です。

  • STEP 1(肥満、糖尿病なし):68週で2.4mg群 平均−14.9%、プラセボ −2.4%(Wilding, NEJM 2021)
  • STEP 2(肥満+2型糖尿病):68週で −9.6%(Davies, Lancet 2021)
  • STEP 6(東アジア人、日本・韓国):68週で −13.2%(Kadowaki, Lancet Diabetes Endocrinol 2022)。日本人でも欧米と同程度に減った点は重要です
  • SELECT:主要心血管イベントを20%低下(Lincoff, NEJM 2023)
  • OASIS 4(経口25mg):64週で −13.6%、治療継続時 −16.6%(Wadden, NEJM 2025)
  • SURMOUNT-5(チルゼパチドとの直接比較):セマグルチド −13.7% vs チルゼパチド −20.2%(Aronne, NEJM 2025)

追記(2026-09-05):UCバークレー主導の研究(Nature, 2026年9月2日)で、高齢(20か月齢)の健康な雌マウスにセマグルチドを3か月投与したところ、中央値寿命が対照群742日→834日と約12%延びたと報告されました。研究者ら自身が「ヒトで同じ効果が得られるとは限らない」と明記しており、マウスの実験段階の話です。抗老化・延命を目的とした承認はどこの国にもありません。

追記(2026-09-07):セマグルチドの特許(US 8,129,343)をめぐる訴訟が急展開しました。ノボノルディスクは2026年2月、オンライン診療大手Hims&Hersが販売する「コンパウンド版」セマグルチドを特許侵害で提訴。ところが1ヶ月後の3月、訴訟を取り下げてHims&Hersのプラットフォームで正規品を供給する提携に転換しました。Hims&Hers株価は37〜46%急騰しましたが、Hims&Hersは「医師が臨床的に必要と判断すれば」コンパウンド版の提供自体は続けるとしており、決着は玉虫色です。詳細は速報で扱っています。

追記(2026-09-25):ノボ ノルディスクの公式発表(2026年6月7日、PR Newswire)によると、経口ウゴービ錠は2026年1月5日の発売から約5ヶ月で累計処方件数300万件を突破。最初の100万件到達に12週間かかったのに対し、そこから200万件積み増すのにはわずか10週間と、ペースが加速していました。新規処方のうち80%超がGLP-1系の薬を初めて使う人向けだったといい、注射から飲み薬への置き換えというより、これまで治療を受けていなかった層を新たに取り込んでいる可能性を示しています。

追記(2026-09-28):ただし、この「新規ユーザー比率」には、発表元によって数字が大きく食い違う点があります。EHR(電子カルテ)データ企業Truvetaが自社データを集計したところでは、経口セマグルチド(ウゴービ錠)を処方された患者のうち36%超は、それ以前にGLP-1系薬を使ったことがなかったとしています。ノボ ノルディスク自身の発表「80%超」とTruvetaの「36%超」は、同じ「新規ユーザーの比率」を指しながら数字が半分以下に開いており、集計期間や対象、方法の違いが疑われます。本稿ではどちらの数字も一次資料(企業発表・Truveta公式ブログ)への到達は確認できていますが、両者を突き合わせた検証はできていません。企業発表の数字は、企業自身の広報である点を割り引いて読む必要があります。

追記(2026-10-01):経口ウゴービをめぐって、今度は競合との比較データが食い違う事例が出ました。欧州肥満学会(ECO 2026)での発表では、経口ウゴービ25mgがイーライリリーの経口薬フォーンダヨ(オルフォルグリプロン)17.2mgより体重減少で優れているという「間接治療比較」の結果が示されています。ところがリリー側は、同時期のEASD 2026(ミラノ)で逆方向の結果(フォーンダヨが優位)を発表しており、正反対の主張が並んでいます。いずれも頭対頭の無作為化試験ではなく、異なる試験データをモデルで橋渡しした間接比較である点は両社の発表とも明記しています。詳細は速報で扱っています。

追記(2026-10-17):米テキサス大学サンアントニオ校の研究(J Med Toxicol. 2026;22(2):275-285、PMID 41634285、本稿でNCBI efetch直接確認)が、中毒管理センターへのGLP-1薬の通報を分析しました。セマグルチドが肥満治療薬として承認された2021年7月を境に、通報数は9.5年で3,113件→その後2.5年だけで6,920件に急増。症状は軽い消化器症状が中心にもかかわらず、医療機関で対応・紹介された割合は23.0%→33.5%(1.46倍)に上昇していました。原因の大半は薬の取り違えやタイミングミスといった使い方の問題です。詳細は速報で扱っています。

追記(2026-10-18):英国のBHIVA/BASHH合同会議(2026年4月開催、2026年10月5日報道、Leicester・NHS Trust、Nazareth氏ら、学会発表・査読前。本稿でNCBI esearchを実行し該当論文0件を確認)が、HIV陽性でGLP-1薬を使用する65人を対象にした記述研究を報告しました。12人(18%)に、検出可能なウイルス量の再燃が見られたといいます(8人は軽微な一時的上昇、重い例では315〜1260コピー/mLまで上昇)。対象者はクリニック全体の約4%にとどまり、著者自身が「積極的な情報開示が必要だったため過小評価の可能性が高い」と明記しています。機序は未解明で、栄養不良やリポアトロフィ(脂肪萎縮)の悪化が懸念点として挙げられています。n=65・学会発表段階という小規模・査読前のデータである点に注意してください。「痩せ薬が、体重以外の持病に影響しうる」という、これまで扱っていなかった角度の報告です。

ヤバい点は?

  • 消化器症状:悪心・嘔吐・下痢・便秘。STEP 1 では2.4mg群の44%に悪心が報告されています
  • 膵炎・胆嚢疾患:胆石や胆嚢炎の増加が報告され、添付文書に記載
  • 糖尿病網膜症:SUSTAIN-6(Marso, NEJM 2016)で網膜症合併症の増加が見られ、糖尿病患者では眼科的な注意が必要
  • 甲状腺C細胞腫瘍:げっ歯類データに基づく米国の枠組み警告。ヒトでのリスクは確定していません
  • 低血糖:SU薬・インスリン併用時に増加
  • 胃に食べ物が残る:全身麻酔前の休薬が議論されています
  • やめたら戻る:STEP 1 延長(Wilding, Diabetes Obes Metab 2022)では、中止1年後に減った体重の約3分の2が戻りました
  • 筋肉も減る:体重減少のうち筋肉量がどの程度で、高齢者にとって何を意味するかは未解明
  • 自殺念慮との関連:欧米の規制当局が調査しましたが、2024年時点で因果関係は確認されていません。追記(2026-09-12):FDAは2026年1月、臨床試験91件・患者10万7,910人のメタ解析と224万人超の請求データ分析を経て、添付文書からこの警告表示を削除するよう製薬会社に要請しました。ただし本稿確認時点で、ウゴービの現行ラベルはまだ更新されていません(詳細は関連記事)
  • 偽物:米国では複製品や偽造品が問題化。個人輸入品や「研究用」粉末は承認薬ではなく、医薬品副作用被害救済制度の対象外です

日本と米国の今

製品米国(FDA)日本(PMDA/厚労省)
オゼンピック(注射、2型糖尿病)2017年12月承認2018年3月承認・2020年発売
リベルサス(経口、2型糖尿病)2019年9月承認2020年6月承認
ウゴービ(注射、肥満症)2021年6月承認。2024年に心血管リスク低下の適応追加2023年3月承認・2024年2月発売
経口ウゴービ(25mg錠、肥満症)2025年12月承認・2026年1月発売未承認

日本のウゴービは最適使用推進ガイドラインの対象で、処方できる施設と患者に条件があります。オゼンピックやリベルサスを「痩せる目的」で自由診療処方するクリニックは多数ありますが、これは適応外使用です。

ペプチ堂管理人の本音

僕はセマグルチドを、この分野で一番「データがある」薬だと思っています。チルゼパチドに減量幅で抜かれた今、セマグルチドの価値は「一番痩せる」ではなく「一番積み上がっている」ことです。SELECT の心血管データは、まだ他の薬にはありません。

一方で、一番雑に扱われている薬でもあります。米国の偽造品、日本の適応外処方や個人輸入。僕が腹立たしいのは、承認薬としてこれだけ丁寧に積まれたエビデンスが、救済制度の外で使われた瞬間に何の保証にもならないことです。

この薬の価値を生かす方法は、正規の処方で使う以外にありません。それ以外は勧めません。

よくある質問

Q. オゼンピック・ウゴービ・リベルサスの違いは? A. 有効成分はすべてセマグルチドです。オゼンピック(注射)とリベルサス(経口)は2型糖尿病、ウゴービ(注射、米国では経口も)は肥満症の適応で、用量設定が異なります。

Q. どのくらい痩せる? A. STEP 1 では68週で平均14.9%、日本人を含む STEP 6 では13.2%の体重減少が報告されています。個人差が大きく、効果を保証する数字ではありません。

Q. チルゼパチド(マンジャロ)とどちらが効く? A. SURMOUNT-5 の直接比較では、減量幅はチルゼパチドの方が大きいと報告されています。ただし心血管アウトカム(SELECT)のデータはセマグルチドにしかありません。

Q. 飲むウゴービは日本で使える? A. 2026年8月時点で日本では未承認です。日本で承認されている経口セマグルチドはリベルサス(2型糖尿病)のみです。

関連する成分

出典

  • Wilding JPH, et al. Once-Weekly Semaglutide in Adults with Overweight or Obesity. N Engl J Med. 2021;384:989-1002.(STEP 1)
  • Davies M, et al. Lancet. 2021.(STEP 2)
  • Kadowaki T, et al. Lancet Diabetes Endocrinol. 2022;10:193-206.(STEP 6、東アジア人)
  • Wilding JPH, et al. Diabetes Obes Metab. 2022.(STEP 1 延長、中止後の再増加)
  • Lincoff AM, et al. Semaglutide and Cardiovascular Outcomes in Obesity without Diabetes. N Engl J Med. 2023;389:2221-2232.(SELECT)
  • Wadden TA, et al. N Engl J Med. 2025.(OASIS 4、経口25mg)
  • Aronne LJ, et al. N Engl J Med. 2025;393:26-36.(SURMOUNT-5)
  • Marso SP, et al. N Engl J Med. 2016;375:1834-1844.(SUSTAIN-6)
  • Feng Y, et al. Late-life semaglutide treatment slows ageing and extends lifespan in female mice. Nature. 2026年9月2日.
  • Truveta「Oral semaglutide prescription trends」公式ブログ(新規ユーザー比率36%超、2026年)
  • FDA:Wegovy/Ozempic/Rybelsus 添付文書・承認情報
  • PMDA:ウゴービ皮下注 審査報告書・最適使用推進ガイドライン
  • 英BHIVA/BASHH合同会議(2026年4月開催、Leicester・NHS Trust、Nazareth氏ら、学会発表・査読前). i-base.info経由、本稿でWebFetch直接確認
  • 医薬品の個人輸入のルール

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本記事は研究・教育目的の情報提供です。特定の製品の使用を推奨・承認するものではなく、医学的助言ではありません。日本で未承認の医薬品は医薬品副作用被害救済制度の対象外です。執筆:ペプチ堂管理人/最終更新:2026-10-18