No.013承認薬

セマグルチド(オゼンピック/ウゴービ/リベルサス)Semaglutide

GLP-1ブームの本流。注射も飲み薬も揃った基準薬

エビデンスの最高段階第III相(STEP 1、NEJM 2021)68週で平均14.9%の体重減少。SELECT(NEJM 2023)で心血管イベント20%低下
米国の状況承認済み(Ozempic 2017年/Rybelsus 2019年/Wegovy 2021年/経口Wegovy 25mg 2025年12月)
日本の状況承認済み(オゼンピック 2018年/リベルサス 2020年/ウゴービ 2023年)。経口ウゴービは未承認
既知のリスク消化器症状、膵炎、胆嚢疾患、糖尿病網膜症の悪化。甲状腺C細胞腫瘍の枠組み警告(米国)
セマグルチド(オゼンピック/ウゴービ/リベルサス)

結論(3行)

セマグルチド(Semaglutide)とは、ノボ ノルディスクが開発したGLP-1受容体作動薬であり、週1回注射の「オゼンピック(2型糖尿病)」「ウゴービ(肥満症)」、1日1回経口の「リベルサス(2型糖尿病)」として日米で承認されている。第III相STEP 1試験では68週で平均14.9%の体重減少、SELECT試験では心血管イベントの20%低下が報告された。2025年12月には米国で経口ウゴービ(25mg錠)も承認され、GLP-1系薬の「基準薬」の地位にある。

セマグルチドとは

セマグルチドは、ヒトGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)の構造を改変したペプチドです。天然のGLP-1は数分で分解されますが、アミノ酸の置換と脂肪酸側鎖の付加によってアルブミンに結合し、半減期を約1週間まで延ばしています。2012年に開発コード NN9535 として第II相が始まり、2017年に米国で初承認されました。

GLP-1受容体を刺激すると、血糖依存的なインスリン分泌、胃排出の遅延、脳の食欲中枢への作用が起こります。この「食欲が落ちる」作用が肥満症治療への転用につながりました。経口のリベルサスと経口ウゴービは、吸収促進剤SNACを配合してペプチドを胃から吸収させる技術を使っており、空腹時に少量の水で服用するなどの制約があります。表記は「セマグルチド」が正式ですが、「セマグルタイド」という英語読みも見かけます。

研究で分かっていること

試験名 段階 対象 主な結果 出典
STEP 1 第III相 肥満(糖尿病なし) 68週で2.4mg群 平均−14.9%(プラセボ −2.4%) Wilding JPH, et al. N Engl J Med. 2021
STEP 2 第III相 肥満+2型糖尿病 68週で −9.6% Davies M, et al. Lancet. 2021
STEP 6 第III相 東アジア人(日本・韓国) 68週で2.4mg群 −13.2% Kadowaki T, et al. Lancet Diabetes Endocrinol. 2022
SELECT 第III相 心血管疾患を持つ肥満 主要心血管イベントを20%低下 Lincoff AM, et al. N Engl J Med. 2023
OASIS 4 第III相 肥満(糖尿病なし) 経口25mgで64週 −13.6%(治療継続時 −16.6%) Wadden TA, et al. N Engl J Med. 2025
SURMOUNT-5 第IIIb相 チルゼパチドとの直接比較 セマグルチド −13.7% vs チルゼパチド −20.2% Aronne LJ, et al. N Engl J Med. 2025

セマグルチドの強みは「痩せる」以外の結果があることです。SELECT試験は1万7千人超を平均3年以上追跡し、糖尿病のない肥満者で心筋梗塞・脳卒中・心血管死の複合リスクを20%減らしました。これは肥満症治療薬として初めて示された心血管アウトカムであり、米国ではウゴービの適応に心血管リスク低下が追加されています。日本人を含むSTEP 6でも欧米と同程度の減量が確認されている点は、日本の読者には重要です。

分かっていないこと

  • 中止後の再増加:STEP 1延長(Wilding JPH, et al. Diabetes Obes Metab. 2022)では、中止1年後に減った体重の約3分の2が戻ったと報告されています。
  • 除脂肪量の減少:体重減少のうち筋肉量の減少がどの程度で、高齢者にとってどんな意味を持つかは未解明です。
  • 経口ウゴービの日本での位置づけ:日本では承認されておらず、承認審査のスケジュールは本稿執筆時点で確認できていません。
  • 自殺念慮との関連:欧米の規制当局が調査しましたが、2024年時点で因果関係は確認されていません。引き続き監視対象です。

日本と米国の承認状況

製品 米国(FDA) 日本(PMDA/厚労省)
オゼンピック(注射、2型糖尿病) 2017年12月承認 2018年3月承認・2020年発売
リベルサス(経口、2型糖尿病) 2019年9月承認 2020年6月承認
ウゴービ(注射、肥満症) 2021年6月承認。2024年に心血管リスク低下の適応追加 2023年3月承認・2024年2月発売
経口ウゴービ(25mg錠、肥満症) 2025年12月承認・2026年1月発売 未承認

日本のウゴービはゼップバウンドと同じく最適使用推進ガイドラインの対象で、処方できる施設と患者に条件があります。オゼンピックやリベルサスを「痩せる目的」で自由診療処方するクリニックは多数ありますが、これは適応外使用です。海外製品の個人輸入品や「研究用」のセマグルチド粉末は承認薬ではなく、医薬品副作用被害救済制度の対象外です。

既知のリスク・副作用

  • 消化器症状:悪心、嘔吐、下痢、便秘。STEP 1では2.4mg群の44%に悪心が報告されています。
  • 膵炎・胆嚢疾患:胆石や胆嚢炎の増加が報告されており、添付文書に記載されています。
  • 糖尿病網膜症:SUSTAIN-6(Marso SP, et al. N Engl J Med. 2016)で網膜症合併症の増加が見られ、糖尿病患者では眼科的な注意が必要です。
  • 甲状腺C細胞腫瘍:げっ歯類データに基づく米国の枠組み警告。ヒトでのリスクは確定していません。
  • 低血糖:SU薬・インスリン併用時に増加。
  • 胃内容物の停滞:全身麻酔前の休薬が議論されています。

海外で話題になっている理由(ペプチ堂管理人の読み)

セマグルチドは、肥満を「意志の問題」から「治療できる病態」に引きずり出した薬だと僕は思っています。STEP 1の15%という数字も大きいですが、本当に景色を変えたのはSELECTです。痩せるだけでなく心臓と脳を守るというデータが出たことで、「美容目的の薬」という批判が成り立たなくなりました。海外でオゼンピックが固有名詞を超えて「GLP-1」という言葉そのものを広めたのは、この一撃があったからです。

一方で、セマグルチドは最も雑に扱われている薬でもあります。米国では複製品や偽造品が問題になり、日本でも「痩せ薬」としての適応外処方や個人輸入が横行しています。僕が腹立たしいのは、承認薬としてこれだけ丁寧に積み上げられたエビデンスが、救済制度の外で使われた瞬間に何の保証にもならないことです。チルゼパチドに減量幅で抜かれた今、セマグルチドの価値は「一番痩せる」ではなく「一番データがある」ことにあります。その価値を生かすには正規の処方で使う以外にありません。

よくある質問

Q. オゼンピック・ウゴービ・リベルサスの違いは? A. 有効成分はすべてセマグルチドです。オゼンピック(注射)とリベルサス(経口)は2型糖尿病、ウゴービ(注射、米国では経口も)は肥満症の適応で、用量設定が異なります。

Q. セマグルチドでどのくらい痩せる? A. STEP 1では68週で平均14.9%、日本人を含むSTEP 6では13.2%の体重減少が報告されています。個人差が大きく、効果を保証する数字ではありません。

Q. チルゼパチド(マンジャロ)とどちらが効く? A. SURMOUNT-5の直接比較では減量幅はチルゼパチドの方が大きいと報告されています。ただし心血管アウトカム(SELECT)のデータはセマグルチドにしかありません。

Q. 飲むウゴービは日本で使える? A. 2026年8月時点で日本では未承認です。日本で承認されている経口セマグルチドはリベルサス(2型糖尿病)のみです。

関連する成分

一次情報

  • Wilding JPH, et al. Once-Weekly Semaglutide in Adults with Overweight or Obesity. N Engl J Med. 2021;384:989-1002.(STEP 1)
  • Kadowaki T, et al. Lancet Diabetes Endocrinol. 2022;10:193-206.(STEP 6、東アジア人)
  • Lincoff AM, et al. Semaglutide and Cardiovascular Outcomes in Obesity without Diabetes. N Engl J Med. 2023;389:2221-2232.(SELECT)
  • Wadden TA, et al. N Engl J Med. 2025.(OASIS 4、経口25mg)
  • Aronne LJ, et al. N Engl J Med. 2025;393:26-36.(SURMOUNT-5)
  • Marso SP, et al. N Engl J Med. 2016;375:1834-1844.(SUSTAIN-6)
  • FDA:Wegovy/Ozempic/Rybelsus 添付文書・承認情報
  • PMDA:ウゴービ皮下注 審査報告書・最適使用推進ガイドライン

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本記事は研究・教育目的の情報提供です。特定の製品の使用を推奨・承認するものではなく、医学的助言ではありません。日本で未承認の医薬品は医薬品副作用被害救済制度の対象外です。執筆:ペプチ堂管理人/最終更新:2026-08-22