No.015痩せ系(GLP-1 系)

次世代GLP-1系薬の一覧Next-generation GLP-1 agents

月1回注射、アミリン併用、肝臓狙い。GLP-1の「次」を4本まとめて読む

エビデンスの最高段階いずれも第III相進行中または審査段階。第II相で13〜23%の体重減少が報告
米国の状況すべて未承認(CagriSemaは承認申請段階と報じられている)
日本の状況すべて未承認
既知のリスク消化器症状が共通。長期安全性・中止後の再増加は未確立
次世代GLP-1系薬の一覧

結論(3行)

次世代GLP-1系薬とは、セマグルチドやチルゼパチドの後に続く開発段階の肥満症治療薬群であり、本稿では MariTide(maridebart cafraglutide)・アミクレチン(amycretin)・CagriSema・survodutide の4つを扱う。いずれもGLP-1受容体への作用を軸に、GIP受容体の「遮断」やアミリン・グルカゴン受容体への作用を組み合わせて、減量幅の拡大や投与間隔の延長を狙っている。2026年8月時点で日米ともにすべて未承認である。

次世代GLP-1系薬とは

チルゼパチドが「GIP+GLP-1」、レタトルチドが「GIP+GLP-1+グルカゴン」と受容体を足していったのに対し、次世代の候補はアプローチがばらけています。

  • MariTide(maridebart cafraglutide、MariTide、開発コード AMG 133):アムジェン。GIP受容体を遮断する抗体に、GLP-1作動ペプチドを2本つないだ「ペプチド抗体複合体」。チルゼパチドがGIPを刺激するのとは正反対の設計で、半減期が長く月1回投与が可能。
  • アミクレチン(amycretin):ノボ ノルディスク。GLP-1受容体とアミリン受容体の両方に作用する単一ペプチド。注射と経口の両方が開発中。
  • CagriSema(カグリセマ):ノボ ノルディスク。セマグルチド2.4mgと、長時間作用型アミリンアナログのカグリリンチド(cagrilintide)2.4mgを週1回で併用する固定用量配合。
  • survodutide(スルボデュチド、BI 456906):ベーリンガーインゲルハイムとZealand Pharma。GLP-1とグルカゴンの二重作動薬で、肥満に加えて代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)を主要ターゲットにしている。

アミリンは膵臓のβ細胞からインスリンと一緒に分泌されるホルモンで、満腹感と胃排出に関わります。GLP-1と別経路で食欲に効くため、併用で効果の上乗せと悪心の軽減が期待されています。

研究で分かっていること

薬剤 段階(2026年8月) 主な結果 出典
MariTide 第III相(MARITIME)進行中 第II相:52週で最大 約−20%(月1回投与) Jastreboff AM, et al. N Engl J Med. 2025
アミクレチン(注射) 第III相進行中 第Ib/IIa相:36週で最大 −24.3% Friedrichsen M, et al. Lancet. 2025
アミクレチン(経口) 第III相進行中 第I相:12週で −13.1% Gasiorek A, et al. Lancet. 2025
CagriSema 第III相完了(REDEFINE)、承認申請段階 REDEFINE 1:68週で −20.4%(セマグルチド単独 −14.9%) Garvey WT, et al. N Engl J Med. 2025
survodutide 第III相(SYNCHRONIZE)進行中 第II相:46週で最大 −14.9%(治療継続時 −18.7%) le Roux CW, et al. Lancet Diabetes Endocrinol. 2024
survodutide(MASH) 第III相(LIVERAGE)進行中 第II相:48週でMASH改善 最大83% Sanyal AJ, et al. N Engl J Med. 2024

数字の読み方に注意が必要です。アミクレチンの24.3%は第I/II相の小規模試験、MariTideの20%は第II相であり、第III相のCagriSemaやレタトルチド以上に不確実です。CagriSemaのREDEFINE 1は第III相で20.4%を出しましたが、事前に会社が示していた25%という目標には届かず、発表時に株価が大きく下がったことで「期待外れ」と報じられました。これは数字が悪いのではなく、期待が先に膨らんでいたという話です。

分かっていないこと

  • MariTideの忍容性:第II相では初期用量での悪心・嘔吐による脱落が多く、用量漸増の設計が第III相で見直されています。
  • GIP遮断とGIP刺激、どちらが正しいのか:チルゼパチド(刺激)とMariTide(遮断)が両方痩せるという矛盾は、まだ生理学的に説明しきれていません。
  • 中止後の再増加:月1回投与や長時間作用型で「やめた後」がどうなるかのデータはほぼありません。
  • 日本人データ:いずれも日本人集団での第III相結果は未公表です。
  • 心血管アウトカム:セマグルチドのSELECTに相当する試験はすべて進行中または未着手です。

日本と米国の承認状況

薬剤 米国(FDA) 日本(PMDA)
MariTide 未承認(第III相) 未承認
アミクレチン 未承認(第III相) 未承認
CagriSema 未承認(承認申請段階と報じられている) 未承認
survodutide 未承認(第III相) 未承認

4つとも未承認であり、日本で正規に入手する手段は治験参加以外に存在しません。海外通販サイトで「Cagrilintide」「Survodutide」などの名前で売られている粉末は、承認薬でも治験薬でもなく、医薬品副作用被害救済制度の対象外です。

既知のリスク・副作用

  • 消化器症状:4剤すべてで悪心・嘔吐・下痢・便秘が最多。MariTideでは第II相で高用量開始群の悪心が特に目立ちました。
  • グルカゴン作用による影響(survodutide):心拍数上昇や血糖への影響が理論上懸念され、第III相で監視されています。
  • アミリン系の注射部位反応(CagriSema、アミクレチン):アミリンアナログに特有の注射部位反応が報告されています。
  • 長期安全性:いずれも承認前であり、市販後データは存在しません。

海外で話題になっている理由(ペプチ堂管理人の読み)

僕の見立てでは、次世代の勝負はもう「何%痩せるか」ではありません。チルゼパチドの20%、レタトルチドの24%で減量幅はほぼ天井に近づいていて、そこから先は「どれだけ楽に、安く、筋肉を残して、やめた後に戻らないか」の戦いです。MariTideの月1回投与、アミクレチンの経口化、survodutideの肝臓狙いは全部その文脈で読むべきで、CagriSemaが「25%に届かなかった」と叩かれたのは、市場がまだ古い物差しで見ている証拠です。

そして海外で本当に話題になっているのは、残念ながらこの中で一番データの薄いものが通販サイトに並んでいるからです。カグリリンチドやsurvodutideの「研究用」粉末は、承認どころか第III相も終わっていない物質です。僕はGLP-1系の進化には心底期待していますが、第II相の数字を見て未承認薬に手を出す人を見ると、この分野の信用を削っているのはそういう人たちだと思います。4つとも、あと2〜3年待てば正規の形で答えが出ます。

よくある質問

Q. 次世代GLP-1薬で一番痩せるのは? A. 単純比較はできません。試験の段階も期間も対象も違うためです。第III相で数字が出ているのはCagriSema(68週で20.4%)で、アミクレチンの24.3%は小規模な早期試験の結果です。

Q. MariTideとチルゼパチドの違いは? A. どちらもGIPとGLP-1に関わりますが、チルゼパチドはGIP受容体を刺激し、MariTideは遮断します。MariTideは抗体を使った構造で月1回投与が可能です。

Q. CagriSemaはいつ承認される? A. 承認申請段階と報じられていますが、2026年8月時点で米国・日本ともに未承認で、承認時期は公表されていません。

関連する成分

一次情報

  • Jastreboff AM, et al. Once-Monthly Maridebart Cafraglutide for the Treatment of Obesity. N Engl J Med. 2025.(MariTide 第II相)
  • Friedrichsen M, et al. Lancet. 2025.(アミクレチン皮下注 第Ib/IIa相)
  • Gasiorek A, et al. Lancet. 2025.(アミクレチン経口 第I相)
  • Garvey WT, et al. N Engl J Med. 2025.(REDEFINE 1)
  • le Roux CW, et al. Lancet Diabetes Endocrinol. 2024;12:162-173.(survodutide 第II相・肥満)
  • Sanyal AJ, et al. N Engl J Med. 2024;391:311-319.(survodutide 第II相・MASH)
  • ClinicalTrials.gov:MARITIME、REDEFINE、SYNCHRONIZE、LIVERAGE 各プログラム

同じカテゴリの成分

本記事は研究・教育目的の情報提供です。特定の製品の使用を推奨・承認するものではなく、医学的助言ではありません。日本で未承認の医薬品は医薬品副作用被害救済制度の対象外です。執筆:ペプチ堂管理人/最終更新:2026-08-22