イーライリリー、レタトルチドの「闇市場」業者6社を提訴 プラットフォームと決済会社にも遮断を要請
イーライリリーが2026年8月12日、開発中の肥満症治療薬レタトルチドを無断で販売しているとして米国の6社を提訴した。「Research Use Only」を掲げる販売業者や調剤薬局、メドスパが対象。同社は同時に、通販プラットフォームと決済会社にも取引の遮断を求めている。
出典:Eli Lilly and Company(プレスリリース)
イーライリリーは2026年8月12日、同社が開発中の肥満症治療薬レタトルチド(Retatrutide)を無断で販売しているとして、米国の6社を提訴したと発表した。レタトルチドは世界のどの規制当局からも承認されていない、第III相試験の段階にある物質である。
同社は訴訟と同時に、通販プラットフォーム・決済会社・物流会社・規制当局に対して、こうした取引を支えているインフラの遮断を公開で要請した。
被告は「研究用」を掲げる販売業者と調剤薬局
リリーの発表によると、提訴されたのは Aesthetic Envy Cosmetic Centers LLC、Astra LLC(Astra Peptides)、Legendary Peptides LLC、Striker Pharmacy LLC、Texas Peptides Inc.、Lone Star Peptide Co. の6社。内訳は「Research-Use Only(研究用のみ)」を掲げるオンライン販売業者が4社、メドスパが1社、調剤薬局が1社とされる。
リリーは、これらの事業者が「研究用」という表示を掲げながら、実際には人が使うことを前提に販売していると主張している。
「売られているものは医薬品ではない」
同社の最高医学責任者である David A. Hyman 医師は、リリースの中で「闇市場で売られているものは医薬品ではない。まったく検証されておらず、承認もされておらず、リスクに見合わない」と述べている。
レタトルチドは GIP・GLP-1・グルカゴンという3つの受容体に同時に作用する注射薬として開発が進んでおり、2026年5月から7月にかけて第III相の TRIUMPH-1/2/3 のトップライン結果が公表された。ただし承認申請(BLA)の提出予定は2027年第1四半期であり、現時点で正規に入手できる経路は治験参加以外に存在しない。
日本の読者に関係する点
日本でもレタトルチドは未承認である。海外の通販サイトから個人輸入した未承認薬で健康被害が生じた場合、医薬品副作用被害救済制度の対象外となる。厚生労働省は GLP-1 系薬の個人輸入について、有効成分が入っていない偽造品や、無菌性が確認できない注射針が確認されているとして繰り返し注意を呼びかけている。
ペプチ堂は入手先・価格・用量を扱わない。今回の訴訟は、承認前の物質が「研究用」という表示だけで流通してしまう構造そのものが、開発元から法的に問われ始めたという点で節目にあたる。
出典
- Eli Lilly and Company「Lilly calls on online platforms, payment companies and regulators to shut down the illegal retatrutide black market」2026年8月12日
- CNBC「Lilly sues six companies over alleged illegal sales of experimental obesity drug retatrutide」2026年8月12日
- BioPharma Dive「Lilly files six lawsuits in bid to shut down ‘black market’ for retatrutide」2026年8月12日
- 関連記事:レタトルチド/研究用(RUO)という表示の意味/医薬品の個人輸入のルール
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