ノボ・ノルディスクがイーライリリーを提訴 「広告が比べている用量が、そもそも古い」
ノボ・ノルディスクが2026年7月21日、イーライリリーを広告における虚偽表示・不正競争でニュージャージー州連邦地裁に提訴した。ゼップバウンド/マンジャロの広告がウゴービ・オゼンピックの旧世代の用量と比較しているという主張。両社は同じ市場で首位を争う関係にある。
出典:Novo Nordisk(公式リリース)/Forbes/NBC News
2026年7月21日、ノボ・ノルディスクがイーライリリーを広告の虚偽表示を理由に米連邦地裁へ提訴した。
争点は、リリーの広告がノボの旧世代・低用量とリリーの最高用量を比較している、という主張。
リリーは「最も直接的な科学的根拠(頭頭試験SURMOUNT-5)に基づく」として、広告の撤回を拒否している。
何が起きたのか
肥満治療薬市場で世界トップを争うノボ・ノルディスクとイーライリリーの間で、法廷闘争が始まりました。ノボ・ノルディスクは2026年7月21日、イーライリリーとリリーUSAを相手取り、ニュージャージー州の米連邦地方裁判所に提訴しました。訴状の内容は、リリーが展開している全国規模の消費者向け広告キャンペーンが、GLP-1系薬剤の比較効果について虚偽・誤解を招く表示をしている、というものです。
何を比較しているのが問題なのか
ノボ側の主張の核心は、広告に使われている用量の選び方にあります。
- ゼップバウンド対ウェゴビ:リリー側は最大耐容用量(10/15mg)を使う一方、比較対象のウゴービ側は1.7/2.4mgという、2026年3月にFDA承認された7.2mgという新しい高用量を無視した数字が使われている
- マンジャロ対オゼンピック:リリー側の最高用量15mgに対し、オゼンピック側は1mgが使われているが、オゼンピックには4年以上前にFDA承認済みの2mgという選択肢がある
ノボはこのゼップバウンドの広告キャンペーンについて、2026年4月末以降で約7億回のインプレッションに達したとしており、影響範囲の大きさを訴訟の根拠の一つに挙げています。ノボは事前にリリーへ広告の取り下げを求める書面(cease-and-desist)を送っていましたが、リリーはこれに応じませんでした。
リリー側の言い分
イーライリリーはこの提訴に対し、自社の広告は「真実で、透明性があり、入手可能な最も直接的な科学的根拠に基づいている」と反論しています。具体的には、チルゼパチドとセマグルチドを直接比較した唯一の頭頭無作為化臨床試験であるSURMOUNT-5の結果を根拠として挙げ、広告表現を維持する姿勢を崩していません。
ノボは訴訟で、リリーの広告の恒久的な差し止めと、訂正広告キャンペーンの実施を求めています。
なぜこの争いが起きているのか
背景には、両社がしのぎを削る市場そのものの大きさがあります。チルゼパチド関連製品(マンジャロ・ゼップバウンド)は2025年1〜9月だけで395億ドル規模を売り上げ、世界の医薬品売上ランキングで上位に入る規模になっています。数十億ドル規模の広告予算がかかる市場だからこそ、「どちらの薬がより効くように見えるか」という広告表現そのものが、訴訟に発展するほどの争点になっています。
ヤバい点は?
- 本件はあくまで両社間の民事訴訟であり、どちらかの薬の有効性・安全性そのものが否定されたわけではありません
- 訴訟の帰趨(判決や和解の内容)によって、今後の広告表現が変わる可能性がありますが、現時点では係争中です
- 日本国内での広告規制・表示には直接影響しません
関連する成分
出典
- Novo Nordisk公式リリース(2026年7月21日付)
- Forbes「Novo Nordisk Asks Court To Block Eli Lilly’s ‘Deceptive Advertising’」
- NBC News「Novo Nordisk says it’s suing Eli Lilly, accusing it of false advertising」
- Axios「Novo Nordisk sues Eli Lilly over weight loss drugs」(2026年7月21日)