8歳から11歳への処方が、7年で310倍になっていた
米学術誌Pediatricsが、肥満のある8〜11歳へのGLP-1系薬の処方割合が2019年の0.03%から2026年に9.3%へ急増したとする研究を公開。実数は2万人超、9割超が重度肥満だった。割合自体はなお低い水準。
出典:Pediatrics誌(全米医療記録データベースEpic Cosmos解析)
米学術誌Pediatrics(2026年9月4日公開)が、肥満のある8〜11歳へのGLP-1受容体作動薬の処方割合を分析した研究を発表した。
処方割合は2019年の0.03%から2026年には9.3%へ、約7年で約310倍に増えたという。実処方数は2万282人。
処方を受けた子どもの93.7%は重度肥満で、65.2%は肥満関連の疾患を1つ以上抱えていた。割合自体は依然として低い水準にとどまる。
続報(2026-09-13):同じ論文の別の側面として、この処方が社会的に恵まれた子供の方に多く出ているという分析も判明しています。詳しくはこちらの記事へ。
続報(2026-10-03):別の研究で、10〜17歳のGLP-1使用者を追跡したところ、約6人に1人(16.88%)が1年以内に栄養欠乏の診断を受けていたことが分かりました。詳しくは下記「その後分かったこと」をご覧ください。
米学術誌Pediatricsが2026年9月4日、肥満のある8〜11歳の子どもに対するGLP-1受容体作動薬の処方傾向を分析した研究を公開しました(Orandi BJら)。
何が起きたのか
研究チームは、全米3億人超・病院2,067施設をカバーする医療記録データベース「Epic Cosmos」を解析しました。その結果、対象年齢(8〜11歳)の肥満児のうちGLP-1系薬を処方された割合は、2019年の0.03%から2026年には9.3%へ、約310倍に増加。実際の処方数は2万282人でした。
処方を受けた子どものうち93.7%が重度肥満、65.2%が肥満に関連する疾患を1つ以上併発していたとのことです。なお、12〜17歳の処方割合は0.9%で、8〜11歳の0.6%(2026年時点の絶対値)よりなお高い水準ですが、伸び率では8〜11歳の方が急でした。
なぜこれが注目されているのか
GLP-1系薬はこれまで主に成人の糖尿病・肥満症治療薬として語られてきましたが、この研究はより若い年齢層でも処方が広がっている実態を、全米規模のデータで示した点が新しいところです。既存の報告では13〜25歳の若年層で肥満治療の主流がすでにGLP-1単独に移り、外科手術がほぼ姿を消しつつあることが分かっていましたが、今回はさらに一段若い8〜11歳という年齢層のデータです。
一方で、処方割合の絶対値は2026年時点でも9.3%(12〜17歳は0.9%)にとどまっており、「一般的になった」と言える水準ではありません。
ヤバい点は?
- 本稿の数字は米国のデータです。日本国内で同様の統計は本稿執筆時点で確認できていません
- 「310倍」は伸び率であり、処方を受けている子どもの絶対数・割合自体はなお少数です。数字の性質を混同しないよう注意が必要です
- 小児への処方は医師の判断のもとで行われるものであり、本稿はその是非を評価するものではありません
その後分かったこと(2026-10-03追記)
今回の「310倍」とは別の研究チームが、10〜17歳のGLP-1使用者2,031人を1年間追跡したclaimsデータ分析を発表した(Child Obesity誌、2026年9月17日号、PMID 42751742)。それによると、16.88%(約6人に1人)が1年以内に栄養欠乏関連の診断を受けていた。最も多かったのはビタミンD欠乏(12.4%)だった。
同じ分析では、栄養指導を180日以内に受けた患者はわずか23.3%(平均到達日数149日)だったことも分かった。さらに、栄養指導を受けた患者群の方が、受けていない患者群よりも栄養欠乏の診断率が高かった(23.2% vs 14.8%)。これは指導が逆効果だったというより、栄養の問題が出てから指導を受けるという順序が多かった可能性が高い。
この研究の著者はAbbott Nutrition/Abbott Medical Devices所属であり、企業との利益相反がある点には留意が必要。
関連する成分
- セマグルチド(オゼンピック/ウゴービ/リベルサス)
- チルゼパチド(マンジャロ/ゼップバウンド)
- アメリカで出される処方箋の12枚に1枚が、もう同じ種類の薬になった
- WHOが10歳未満への薬物治療を推奨しないとした同じ時期に、6歳児の治験が動いていた
出典
- Orandi BJ, et al. Trends in GLP-1 Receptor Agonist Prescriptions for Children Ages 8 to 11 With Obesity: 2019-2026. Pediatrics. 2026年9月4日.
- PRNewswire(Pediatrics誌の発表を引用)「GLP-1 Use Among Young Children With Obesity in US Remains Rare but Is Rising Rapidly」
- Kerr A, et al. Child Obesity誌 2026年9月17日号(PMID 42751742)。NCBI PubMedでabstract全文を直接確認。