罰する仕組みは、確かにあった。使われたのは8回だけだった
ClinicalTrials.govへの虚偽登録を正式に罰するFDAの制度「Notice of Noncompliance」が、2021年から2025年の4年間で8件しか発動されていなかった。本誌既報の偽治験8件もこのリストには含まれていない。
出典:FDA公式ページ「ClinicalTrials.gov Notices of Noncompliance and Civil Money Penalty Actions」
ClinicalTrials.govに虚偽の情報を登録した場合、FDAが正式な制裁(Notice of Noncompliance)を出せる制度がある。
ところが2021年4月から2025年8月までの4年強で、実際に発動されたのはわずか8件だった。
本誌が既報で伝えたHudson Biotech名義の偽治験8件は、このリストのどこにも登場しない。
虚偽の治験情報を取り締まる仕組みは、ちゃんと存在していた。ただし、ほとんど使われていなかった。
何が起きたのか
FDAの公式ページには、ClinicalTrials.govへの登録義務違反に対する制裁の記録が公開されている。違反の種類には、結果報告の未提出だけでなく「虚偽・誤解を招く情報を知りながら提出した場合」も含まれる。
このページを確認したところ、正式な制裁であるNotice of Noncomplianceが発出されたのは、2021年4月27日(Acceleron Pharma社)から2025年8月4日(Mantia-Smaldone氏)までの間で合計8件のみだった。その前段階にあたる予備通知(Pre-Notice)まで含めても232件にとどまる。
本誌が既報で伝えた、BPC-157・MOTS-c・TB-500・GHK-Cu・メラノタンIIなどを対象にした同一スポンサー(Hudson Biotech)名義の偽治験8件(うち1件はタイトルに文字通り(Mock Study)と書かれていた)は、このリストのどちらにも含まれていない。
なぜこれが注目されているのか
ClinicalTrials.govへの登録は研究者の自己申告であり、FDAが登録内容を事前に審査しているわけではない。虚偽の登録があっても、それを罰する制度の運用実績が4年で8件という少なさは、「仕組みはあるが機能していない」実態を映している可能性がある。
本誌既報のHudson Biotech名義の偽治験は、発見から半年以上(最終更新は2026年3月26日)経っても登録情報に動きがない。制裁リストに登場しないという事実は、「見過ごされている」のか「まだ審査中」なのかを区別できないが、少なくとも罰則が発動された形跡はないことを意味する。
ヤバい点は?
- Notice of Noncompliance 8件・Pre-Notice 232件という数字はFDA公式ページの一覧を数えたものであり、非公開の内部対応(警告のみ等)がある可能性は否定できない
- Hudson Biotechがリストに無いことは「制裁を受けていない」ことの証明であって、「今後も制裁を受けない」ことの証明ではない
- ClinicalTrials.govの登録は研究が実在する証明にはならない。NCT番号があるからといって、その治験が実際に行われているとは限らない
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出典
- FDA公式ページ「ClinicalTrials.gov Notices of Noncompliance and Civil Money Penalty Actions」https://www.fda.gov/science-research/fdas-role-clinicaltrialsgov-information/clinicaltrialsgov-notices-noncompliance-and-civil-money-penalty-actions