世界では苦戦中の薬が、日本人のデータだけ見ると一番よく効いていた
ノボ ノルディスクのカグリセマは世界規模の治験で失速したとされる。だが日本・台湾限定の第3相治験では、68週で体重18.4%減という、これまでで最も強い数字が出ていた。
出典:The Lancet Diabetes & Endocrinology/ClinicalTrials.gov
[カグリリンチド](/peptides/cagrilintide/)とセマグルチドの配合剤「カグリセマ」は、海外の大規模治験では苦戦したと報じられてきた。
ところが日本・台湾に限定した第3相治験「REDEFINE 5」では、68週で体重が18.4%減、単剤の11.9%減を大きく上回った。
本稿はこの治験を、論文(PMID 42009015)とClinicalTrials.gov(NCT05813925)の両方でAPI直接確認している。
ノボ ノルディスクが開発中の週1回注射薬「カグリセマ(CagriSema)」をめぐって、世界規模の治験結果とは対照的な数字が、日本・台湾限定の治験から報告されていたことが分かりました。
何が確認できたか
対象の治験は「REDEFINE 5」。日本人・台湾人の過体重・肥満の成人(2型糖尿病の有無を問わず)331人を、カグリリンチドとセマグルチドの配合剤群と、セマグルチド単剤群にランダムに割り付けて68週間比較した第3a相試験です。
本稿では2つの一次資料を直接確認しました。1つは論文そのもの。The Lancet Diabetes & Endocrinology誌(2026年6月号)に掲載された論文をNCBI E-utilitiesの厳密検索で照合し、PMID 42009015、著者は山内敏正氏(東京大学)ら日本側研究者を含むチームと確認しています。もう1つは治験登録そのもの。論文中に記載された登録番号NCT05813925をClinicalTrials.govのAPIで直接照会したところ、スポンサーはNovo Nordisk A/S、ステータスは「COMPLETED(完了)」、実際の登録人数331人、実施施設28か所(日本国内が中心)という記載が、論文の内容と完全に一致しました。
どんな数字が出たか
68週時点の体重減少率は、配合剤群が18.4%、セマグルチド単剤群が11.9%。その差は6.5ポイントで、統計的にも意味のある差(p<0.0001)と報告されています。
この数字が注目される理由は、カグリセマの海外での評価と食い違って見えるからです。世界規模の治験では、ライバル薬チルゼパチドとの直接比較で非劣性(同じくらいの効果)を示せなかったと報じられ、ノボ ノルディスク自身も業績見通しを引き下げています。同じ薬が、日本人・台湾人という対象集団に限れば、これまで報告されてきた数字の中でもかなり強い部類に入る結果を出していたことになります。
なお、同じ治験でセマグルチド単剤群には死亡例が1件報告されていますが、論文では治験責任医師の判断により治療との関連は認定されていません。
ヤバい点は?
- 日本人・台湾人という限られた対象集団のデータであり、世界規模の治験結果と単純に優劣を比較できるものではありません。対象集団による体質差(薬の効き方の違い)がどこまで寄与しているかは、本稿の確認範囲では分かりません
- カグリセマは2026年9月時点で日米ともに未承認です。米国では2025年12月に承認申請が出されていますが、日本での申請状況は公表されていません
- 仮に将来承認されたとしても、個人輸入や未承認のまま入手した場合は医薬品副作用被害被害救済制度の対象外です
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出典
- The Lancet Diabetes & Endocrinology「Efficacy and safety of co-administered cagrilintide and semaglutide…in Japan and Taiwan (REDEFINE 5)」2026年6月号(本稿でNCBI E-utilities経由に一次確認、PMID 42009015)
- ClinicalTrials.gov「NCT05813925」(本稿でAPI直接確認、2026-09-16)