訴訟は一つではなかった。もう一つ、専用の法廷があった
GLP-1薬の副作用訴訟は胃麻痺を争うMDL 3094が知られているが、視力障害(NAION)だけを専門に争う別のMDL 3163が2025年12月に新設されていたことが、米連邦裁判所の公式記録で確認できた。審理はそれぞれ別の法廷で進んでいる。
GLP-1薬の副作用訴訟といえば、胃麻痺(ガストロパレーシス)を争うMDL 3094が知られている。
だが米連邦裁判所の公式記録を確認したところ、視力障害(NAION、視神経の血流障害による失明)だけを専門に争う別のMDL 3163が、2025年12月に新設されていたことがわかった。
2つのMDLは名前も裁判官も別。混同したまま報じられることが多い。
胃の訴訟とは、別の法廷で争われていた。
何が起きたのか
米連邦裁判所の公開記録(govinfo.gov、paed.uscourts.gov)を本稿で直接確認したところ、GLP-1薬による視力障害(NAION)を主張する訴訟だけを集めた多地区訴訟(MDL)が、2025年12月に新設されていたことがわかった。
正式名称は「In Re: Glucagon-like Peptide-1 Receptor Agonists (GLP-1 RAs) Non-Arteritic Anterior Ischemic Optic Neuropathy Products Liability Litigation」。ドケット番号は1:25-F-03163で、米東部ペンシルベニア地区連邦地裁のKaren S. Marston判事が審理を担当している。
これは、既報のMDL 3094(胃麻痺・イレウスなどの消化器系の副作用を争う訴訟、数千件規模)とはまったく別の手続きだ。原告側の主張内容(視力障害か消化器症状か)が違うため、審理の進み方もそれぞれ独立している。
件数は、裁判所の文書どうしでも食い違っていた
MDL 3163に統合されている訴訟の件数は、確認できた資料の間でも揺れている。裁判所自身の命令文書(Case Management Order)ベースでは2026年6月時点で110件という記録が確認できた一方、訴訟専門メディアの二次報道では2026年10月時点で247件(5月時点86件から増加)という数字も出ている。本稿では10月時点の件数そのものを裁判所の公式記録で直接確認することはできていない。
追記(2026-10-06):そもそも裁判所は件数を公表していなかった
MDL 3163の公式オーダー一覧ページに本稿が改めて直接確認したところ、係属件数を記載したオーダーは一件も存在しなかった。公開されているのはCase Management Order No.4〜12(審理手続きに関する命令)のみで、件数の集計・公表はそもそも裁判所の業務範囲に入っていない。これはMDL 3094でも同様で、二次報道同士の数字が一致しない根本理由は、報道の誤りではなく「公式な正解が存在しない」という構造だったと分かった。
ヤバい点は?
- MDL 3163の存在・正式名称・ドケット番号・担当判事は、裁判所の公式記録で直接確認した(一次)
- 10月時点の係属件数(247件)は二次報道のみで、裁判所の公式記録では未確認
- 訴訟はあくまで原告側の主張であり、GLP-1薬と視力障害の因果関係が裁判所で認定されたわけではない
- 日本ではGLP-1薬(セマグルチド・チルゼパチドなど)は承認薬として流通しており、米国の集団訴訟制度(MDL)自体が日本に存在しない
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出典
- govinfo.gov「JPML Transfer Order, USCOURTS-jpml-1_25-F-03163」(本稿でWebFetch直接確認) https://www.govinfo.gov/app/details/USCOURTS-jpml-1_25-F-03163/USCOURTS-jpml-1_25-F-03163-0
- 米東部ペンシルベニア地区連邦地裁(paed.uscourts.gov)のケース管理文書(本稿で直接確認)