速報2026-10-06

裁判所自身のページに、みんなが欲しがる数字だけが無かった

GLP-1薬の副作用訴訟(MDL3094・3163)の係属件数は、報じるたびに違う数字が出る。裁判所の公式オーダー一覧ページに直接確認したところ、原因は単純だった。件数そのものが、一度も掲載されていなかった。

出典:paed.uscourts.gov(米東部ペンシルベニア地区連邦地裁 MDL公式オーダー一覧)/jpml.uscourts.gov(連邦複数地区訴訟委員会)

GLP-1薬の副作用訴訟MDL3094・MDL3163の係属件数は、調べるたびに違う数字が出てくる。

裁判所の公式オーダー一覧ページに本稿が直接確認したところ、原因は「報道が不正確」ではなかった。

係属件数そのものが、裁判所のどのオーダーにも一度も掲載されていなかった。

数字が食い違う記事を何本も読んだ。でも、誰も間違えていなかった。

同じ訴訟の係属件数が、5通りある

GLP-1薬の消化器系副作用(胃麻痺など)を争うMDL3094の係属件数は、本稿が過去複数日にわたって確認した限りで、3,763件/3,848件/4,022件/4,025件/4,706件の5通りが出てきた。しかも4,706件は、見出しでは「3,848件」と書かれていた同じ記事の本文に出てくる数字だった。同じ記事の中でさえ一致していない。

MDL3163(視力障害を争う別の訴訟)も同様で、裁判所文書ベースの110件(2026年6月時点)と、訴訟トラッカー経由の247件(2026年10月時点)が並立している。

裁判所自身のページを、直接見に行った

本稿は米東部ペンシルベニア地区連邦地裁が公開しているMDL3094・MDL3163それぞれのオーダー一覧ページに直接アクセスし、公開されている全てのCase Management Order(CMO)を確認した。

結果は明確だった。係属件数(pending case count)を記載したオーダーは、どちらのMDLにも一件も無かった。 MDL3094の最新はCase Management Order No.32(2026年8月28日付、審理スケジュールに関する命令)、MDL3163はCase Management Order No.4〜12(審理手続きに関する命令)。いずれも手続きの進行管理が目的で、件数の集計・公表はそもそも裁判所の業務として行われていない。

だから、報道同士が一致するはずがなかった

訴訟の係属件数は、通常JPML(多地区訴訟審理パネル)の移送命令や、原告側弁護団・訴訟トラッカーサイトが独自に集計して発表する。だがその集計の「正解」を裁判所自身が検証・公表していないため、集計元が違えば数字も違う。しかも訴訟は日々新規提訴・和解・取り下げが発生するため、集計時点がわずかに違うだけでも数字は動く。

つまり「どの数字が正しいか」を裁判所の記録だけで決めることは、現時点ではできない。本稿が5日前から追い続けてきた数字の揺れは、集計元の誤りではなく、そもそも公式な「正解」が存在しないという構造の結果だったと分かった。

違う役所の報告書に、数字はあった(2026-10-08追記)

「裁判所は件数を公表していない」という上記の判断は、見る場所が違っていたという形で訂正が必要になった。個々の地区裁判所(paed.uscourts.gov)のオーダー一覧ページには確かに記載が無かったが、複数の地区にまたがる訴訟をまとめて管理する米連邦複数地区訴訟委員会(JPML)自身が、毎月「MDL Statistics Report」という全国統計レポートを発行していた。本稿がこの2026年10月1日付レポートを直接確認したところ、MDL-3094(GLP-1薬の消化器系副作用訴訟)の係属件数は4,025件(総件数4,139件)、MDL-3163(視力障害訴訟)は247件と、正式な数字が明記されていた。

このレポートは全米162件のMDL係属事件を件数順に一覧したもので、GLP-1訴訟(MDL-3094)は全米13位の規模だった(1位はジョンソン・エンド・ジョンソンのタルカムパウダー訴訟69,340件)。「裁判所は公表していない」のではなく、「個々の地区裁判所のページではなく、取りまとめ機関であるJPML自身の月次統計を見るべきだった」というのが正確な結論になる。

ヤバい点は?

  • これは米国の集団訴訟制度(MDL)に関する話で、日本の裁判制度には同種の係属件数公表義務・非公表の構造は該当しない
  • 件数が非公表であることは、訴訟の規模が小さいことを意味しない。CMOの発行頻度・内容からは、両MDLとも審理が活発に進行していることがうかがえる
  • GLP-1薬と副作用の因果関係は、あくまで原告側の主張であり、裁判所が認定したものではない

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出典

  • 米東部ペンシルベニア地区連邦地裁 MDL3094公式オーダー一覧(本稿でWebFetch直接確認) https://www.paed.uscourts.gov/mdl3094
  • 米東部ペンシルベニア地区連邦地裁 MDL3163公式オーダー一覧(本稿でWebFetch直接確認) https://www.paed.uscourts.gov/mdl3163
  • 複数の訴訟専門トラッカーサイト(係属件数の二次情報。本稿でWebSearch確認、裁判所一次資料との不一致を比較する目的でのみ引用)
  • 米連邦複数地区訴訟委員会(JPML)「MDL Statistics Report」2026年10月1日付(2026-10-08追記分。本稿でWebFetch直接確認) https://www.jpml.uscourts.gov/

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本記事は海外の一次情報を日本語で要約した速報です。医学的助言ではありません。執筆:ペプチ堂管理人 /最終更新:2026-10-08