846軒のクリニックメニューを分析したら、業界最大の勘違いが見つかった
全米50州・846のペプチドクリニックのメニューを業界サイトが分析。GLP-1系薬と回復系ペプチドの両方を扱うのはわずか35%で、57%はFDAが審査対象にした化合物を今も扱っていた。「痩せ薬クリニック」と「ペプチドクリニック」は同じではない。
執筆:ペプチ堂管理人/最終更新:2026-10-07

業界サイトHealingMapsが2026年7月、全米50州の検証済みペプチドクリニック846軒のメニューを分析した。
GLP-1系の名指しの減量薬を提供しているのは47%、BPC-157などの回復系ペプチドは71%。だが両方を提供しているのはわずか35%だった。さらに57%は、FDAの諮問委員会が2026年に審査対象とした7化合物の少なくとも1つを今も扱っている。
「ペプチドクリニック」と「痩せ薬クリニック」は、思っているほど同じ場所ではない。
「ペプチドクリニック」と聞いたとき、多くの人はオゼンピックやマンジャロのようなGLP-1系の減量薬を打つ場所を思い浮かべるはずです。ところが、業界サイトHealingMapsが846軒のメニューを実際に分析したところ、その思い込みは半分しか合っていませんでした。
846軒を分析したら、何が見えたか
HealingMapsは2026年7月、自社が検証済みとして掲載している全米50州のペプチドクリニック846軒について、提供メニューを横断的に集計しました。結果は次の通りです。
- GLP-1系の名指しの減量薬(オゼンピック等)を提供:47%
- BPC-157など回復・成長系ペプチドを提供:71%
- 両方を提供:35%
- FDAの化合物リストで最多提供だったのはBPC-157(55.3%)、次点がセルモレリン(48.9%)。セマグルチドは第5位(39.2%)
つまり、「ペプチドクリニック」という看板の裏側には、GLP-1中心の店・回復系ペプチド中心の店・両方をやる店という、少なくとも3つの違う実態が混在しているということです。たとえるなら、「美容クリニック」という看板の下に、レーザー脱毛専門店とボトックス専門店と総合美容外科が混ざっているようなものです。同じ看板でも、中で扱っているものはかなり違います。
FDAが問題視した成分も、まだ半分以上で扱われている
もう一つ見逃せない数字があります。57%のクリニックが、FDAの専門家会議(PCAC)が2026年に審査対象とした7化合物の少なくとも1つを今も扱っているという点です。
このPCACという会議については、ペプチ堂も既存記事で伝えています。2026年7月、BPC-157・KPV・TB-500・MOTS-c・セマックス・エピタロンの6つについて「薬局が調合の材料に使ってよい」と投票されました。ただし、FDA自身の審査官は7品目すべてに反対しており、投票にも法的拘束力はありません。「合法になった」わけでも「効果が認められた」わけでもないのに、現場では過半数のクリニックがすでに扱っている——このギャップが、今回のHealingMapsのデータで初めて数字として見える形になりました。
追記(2026-10-07):別の名簿では、クリニック数が10倍だった
本稿掲載後、同じ「全米のペプチドクリニック数」を集計している別のサイトを確認したところ、さらに驚く数字が見つかりました。業者比較サイトCheckPeptidesが自社ディレクトリに掲載している件数は、本稿でページを直接確認したところ8,803軒・41州。HealingMapsの846軒と比べると、約10倍の開きがあります。
CheckPeptidesのページには「ライセンスを持つ提供者」という条件は書かれているものの、HealingMaps同様、どういう基準で掲載するか・どう検証するかの方法論は公開されていませんでした。同じ市場を数えているはずの2つの名簿が、桁が1つ違う数字を出している——これ自体が、「ペプチドクリニックの数」という業界でよく引用される数字が、どれほど緩い土台の上にあるかを示しています。本稿はどちらの数字が正しいかを判定するものではなく、引用する際はどちらの名簿由来かを明記すべきだという注意喚起として記録します。
ヤバい点は?
- HealingMapsは業界サイトであり、算出方法の詳細な開示は限定的です。数字は二次情報として扱ってください
- 「クリニックで提供されている」ことは「安全性・有効性が確認されている」ことを意味しません。BPC-157・TB-500・セルモレリンなどは、いずれも日本では医薬品として承認されていません
- 未承認成分による健康被害は、日本の医薬品副作用被害救済制度の対象外です
- 本稿はクリニックの選び方や利用方法を案内するものではありません
ペプチ堂管理人の本音
僕がこのデータで一番驚いたのは、「両方扱っているのは35%だけ」という数字です。GLP-1ブームの陰で、ペプチド業界全体が一枚岩の「痩せ薬産業」になっているような報じられ方をよく見ますが、実態はもっとバラバラでした。
そしてもう一つ、57%という数字は正直に言って気になります。PCACの投票は「安全だと確認された」からではなく「安全でないと言い切る材料もない」という、消極的な理由で6品目が推奨されたものでした。それを、法的な決着がついていない段階でこれだけの現場が先取りして扱っている。ブームが制度の追いつきを追い越している、という構図がここにも表れていると思います。
関連する成分
- 唐辛子の絵文字が、規制逃れの合言葉になっていた
- FDAの専門家会議が、BPC-157など6つのペプチドに「薬局で扱ってよい」と投票
- BPC-157
- アメリカでは、ジムに行けばみんな打っている ペプチドのグレーマーケットで実際に起きていること
- セマグルチド(オゼンピック/ウゴービ/リベルサス)
出典
- HealingMaps「State of Peptide Medicine: America 2026」(2026年7月11日公開、2026年7月時点データ)
- CheckPeptides「Find Peptide Therapy Clinics Near You」https://checkpeptides.com/clinics/(2026-10-07追記分、本稿で直接確認)