速報2026-10-16

「肝毒性があった」と報じられた論文を開いたら、「深刻な毒性は無い」と書かれていた

米医療報道KFF Health Newsが、BPC-157使用後の入院2件を報じ、根拠の一つに『2020年の肝毒性研究』を挙げた。本稿がNCBI E-utilitiesで同論文を直接確認したところ、結論は『深刻な毒性は認められなかった』で、肝臓への言及自体が無かった。

出典:KFF Health News(記者Amy Maxmen、2026年10月13日)/本稿でPubMed・NCBI E-utilities直接確認

米医療報道KFF Health News(2026年10月13日)が、未承認ペプチド「BPC-157」使用後に2人が入院したとFDAの有害事象報告(FAERS)を基に報じた。

記事は根拠の一つに「2020年の研究がラットと犬に肝毒性の兆候を示した」と記しているが、本稿がNCBI E-utilitiesで該当する2020年論文を直接確認したところ、結論は「深刻な毒性は認められなかった」で、肝臓への言及自体が見当たらなかった。

報道の誤りと断定するのではなく、「一次資料との食い違いがある」という段階で、両方の記述を並べて残す。

何が起きたのか

本稿がKFF Health News(記者Amy Maxmen、2026年10月13日)の記事を直接確認したところ、未承認の実験的ペプチド「BPC-157」を使用した後に入院した2人の事例が、FDAの有害事象報告システム(FAERS)を根拠に報じられていた。36歳女性は減量と皮膚疾患を目的に使用後の12月に入院、48歳男性は使用後に「生命を脅かす状態」で入院したという。記事は他にも、使用者の片頭痛・顔の感覚喪失・眼や筋肉の痙攣といった証言を紹介している。

記事の背景にあるのは、米保健福祉長官Robert F. Kennedy Jr.がペプチドの「大ファン」を公言し、「実験的な薬を使いたければ使えるべきだ」と述べてアクセス拡大を推進している構図だ。2026年7月、FDAの薬局調剤諮問委員会(PCAC)はBPC-157を含む6種のペプチドを503Aリストに収載するよう投票で推奨している。南カリフォルニア大学の肝疾患専門医Brian Lee氏はこの投票に反対票を投じた一人として記事に名前が挙がっている。

根拠とされた「2020年の肝毒性研究」を確認すると

記事はBPC-157の安全性への懸念の根拠として「2020年の研究が、ラットと犬に肝毒性の兆候を示した」と記している。本稿がNCBI E-utilitiesで検索したところ、2020年にBPC-157のラット・犬への毒性試験を行った論文はPMID 32334036(Xu et al., Regulatory Toxicology and Pharmacology 2020;114:104665、中国・第四軍医大学)のみだった。

この論文を本稿がNCBI efetchで直接確認したところ、結論は次の一文だった。

BPC157 was well tolerated and did not cause any serious toxicity in mice, rats, rabbits and dogs. (BPC157は良好な耐容性を示し、マウス・ラット・ウサギ・犬のいずれにも深刻な毒性は引き起こさなかった)

唯一報告されている所見は、高用量(2mg/kg)を投与した犬で見られたクレアチニン(腎機能の指標。肝臓ではない)の一時的な低下で、投与中止後2週間で自然に回復したとされている。本稿が「BPC-157 AND 2020[dp] AND (liver OR hepatotoxic) AND rat AND dog」という条件でPubMedを検索しても、該当する論文はゼロ件だった。つまり「肝毒性を示した2020年のラット・犬研究」という記述に厳密に一致する論文は、本稿の確認範囲では見当たらなかった。

ヤバい点は?

  • KFF Health Newsは医療報道で評価の高いメディアだが、本稿の確認では、記事が挙げた一次資料の記述とPubMed上の実際の論文内容が一致しなかった
  • これは「どちらが正しいか」を断定できる話ではない。別の未索引の2020年文献が存在する可能性も残るため、本稿は「食い違いがある」という段階で記録する
  • 入院2件自体はFAERSという公的データベースへの報告が根拠であり、報告された事実そのものは一次情報として確認できる。一方、因果関係(BPC-157が原因かどうか)は確定していない
  • BPC-157は日米ともに未承認。健康被害が生じても医薬品副作用被害救済制度の対象外

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出典

  • KFF Health News. “People Say These Peptides Hurt Them. Their Stories Are Muffled in MAHA’s Push for Medical Freedom.” Amy Maxmen記者、2026年10月13日。本稿でWebFetch直接確認。
  • Xu C, et al. Preclinical safety evaluation of body protective compound-157, a potential drug for treating various wounds. Regul Toxicol Pharmacol. 2020;114:104665.(PMID 32334036、本稿でNCBI efetch直接確認)
  • 本稿によるPubMed検索(NCBI esearch、条件: BPC-157 AND 2020[dp] AND (liver OR hepatotoxic) AND rat AND dog、結果0件)

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本記事は海外の一次情報を日本語で要約した速報です。医学的助言ではありません。執筆:ペプチ堂管理人