食欲を、科学が黙らせた

痩せたい人が、海外で注目しているペプチド

「痩せたい」という欲望に海外が出した答えは、GLP-1系ペプチドでした。承認済みのセマグルチド・チルゼパチドから、治験で平均28%減を報告したレタトルチド、次世代の経口薬、そして開発中止のAOD-9604まで。研究段階と承認状況を目的別に整理します。

海外の答え 「痩せたい」に対する本命は GLP-1系ペプチド。食欲のスイッチそのものを触る薬です。

どこまで来た? 承認済みが2つ、第III相で平均28%減を報告した候補が1つ、経口薬も米国で承認済み。

日本では? 承認済みは肥満症の診断がある人に医師が処方するもの。それ以外は未承認で救済制度の対象外です。

「痩せたい」に、海外が出した答え

ダイエットの歴史は、意志の力との戦いでした。食べない。動く。我慢する。

海外がここ数年で出した答えは、まったく違う方向です。「我慢させない。脳に『もう満腹』と思わせる」

それを実現したのが GLP-1系ペプチドです。食事をすると腸から出るホルモン(GLP-1)を真似た分子で、脳の満腹中枢(食べるのをやめさせるブレーキ)を押し続けます。

たとえるなら、冷蔵庫に鍵をかけるのではなく、冷蔵庫を開けたいという気持ちの音量を下げる薬です。

ここからは、海外で「痩せ薬」として語られているペプチドを、研究の段階が進んでいる順に並べます。

成分ごとの現在地

セマグルチド(オゼンピック/ウゴービ)

  • 何者? GLP-1系のパイオニア。週1回注射と、飲み薬(リベルサス)がある。
  • 研究段階 第III相完了。STEP 1試験(NEJM 2021)で68週・平均14.9%の体重減少。
  • 承認 米国・日本とも承認済み(日本は肥満症としてウゴービ 2023年)。
  • セマグルチドの詳細

チルゼパチド(マンジャロ/ゼップバウンド)

  • 何者? GLP-1 と GIP の2つの受容体を同時に押す「二重作動薬」。
  • 研究段階 第III相完了。SURMOUNT-1(NEJM 2022)で72週・最大平均20.9%の減少。
  • 承認 米国・日本とも承認済み(日本は肥満症として2024年12月)。
  • チルゼパチドの詳細セマグルチドとの違い

レタトルチド

  • 何者? GLP-1・GIP・グルカゴンの「三重作動薬」。海外で最も話題の次の本命。
  • 研究段階 第III相 TRIUMPH-1(2026年)で80週・最高用量 平均28.3%の減少。
  • 承認 未承認。承認申請は2027年第1四半期の予定と報じられています。
  • レタトルチドの詳細

オルフォルグリプロン

  • 何者? ペプチドではなく低分子ですが、同じ GLP-1 受容体を押す「飲める GLP-1」。
  • 研究段階 第III相 ATTAIN-1(NEJM 2025)で72週・平均12.4%の減少。
  • 承認 米国で2026年4月に承認。日本は未承認(申請中と報じられています)。
  • オルフォルグリプロンの詳細

カグリリンチド(カグリセマ)

  • 何者? アミリンという別の満腹ホルモンを真似た分子。セマグルチドと組み合わせて使う。
  • 研究段階 第III相 REDEFINE 1(NEJM 2025)で68週・平均20.4%の減少。
  • 承認 米国で承認申請中。日本は未承認
  • カグリリンチドの詳細

次世代 GLP-1系薬(一覧)

  • 上記以外にも、第II相で13〜23%の減少を報告した候補が複数あります。
  • すべて未承認
  • 次世代GLP-1系薬の一覧

AOD-9604

  • 何者? 成長ホルモンの一部分を切り出した「脂肪燃焼ペプチド」として SNS で語られる分子。
  • 研究段階 ヒト第II相まで進んだが主要評価項目を達成できず開発中止
  • 承認 米国・日本とも未承認。2024年12月に FDA の諮問委員会が0対12で調剤リスト収載を否決。
  • AOD-9604の詳細

現実的にできること(日本で合法な範囲)

  • 肥満症の診断を受けて、医師に相談する。 ウゴービとゼップバウンドは日本で承認済みです。適応の条件(BMI と合併症)があるので、まず受診です。
  • 2型糖尿病がある人は、糖尿病の主治医に。 オゼンピック、マンジャロ、リベルサスは糖尿病治療薬として処方されています。
  • 承認薬でも「個人輸入」は別物。 国内で承認された薬でも、海外から個人輸入したものは救済制度の対象外です。→ 個人輸入の法的整理
  • 急激に痩せると顔が老ける。 海外で「オゼンピックフェイス」と呼ばれる現象です。痩せる前に知っておいてください。→ オゼンピックフェイスの正体
  • 生活習慣は、薬をやめた後の保険。 GLP-1系は中止すると体重が戻る傾向が報告されています。薬の効いている間に食事と運動の型を作ることが、海外の臨床医の共通見解です。

ペプチ堂管理人の本音

僕は、GLP-1系は「ダイエット」という言葉の意味を変えたと思っています。意志の問題だったものを、生理の問題に引き戻した。これは素直にすごい。

ただ、この分野は「承認済み」と「未承認」が同じタイムラインに並んで流れてくるのが厄介です。マンジャロとレタトルチドは、SNS では同じテンションで語られます。でも片方は日本で処方される薬、もう片方は治験中の分子です。健康被害が出たときの扱いは天と地ほど違います。

痩せたいなら、まず病院。それで対象外と言われたら、それは「薬が要らない体」ということです。僕は未承認のものの使用も入手も勧めません。

よくある質問

Q. 痩せるペプチドで一番効くのはどれですか。 A. 治験データの数字だけ見ればレタトルチドが最大ですが、未承認です。日本で合法に使えるのは医師が処方する承認薬だけです。

Q. AOD-9604 は「副作用のない痩せ薬」と聞きました。 A. ヒト試験で有効性を示せず開発中止になった分子です。FDA の諮問委員会も全会一致で否決しています。

Q. GLP-1 はやめたら戻りますか。 A. 中止後に体重が戻る傾向が複数の試験で報告されています。生活習慣の併用が前提です。

Q. 飲み薬はありますか。 A. リベルサス(セマグルチド)は日本で承認済み。オルフォルグリプロンは米国のみ承認で、日本は未承認です。

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本記事は研究・教育目的の情報提供です。医学的助言ではありません。最終更新:2026-08-22